小学生になったばかりの頃、市営の図書館に連れて行ってもらいました。
当時、図書館は市役所の建物の一部として存在していました。
天井近くまでの高さの鉄製の本棚がいくつも並んでいるので見通しは悪く、室内は薄暗く、通路は人が2人すれ違うのがやっとというほど狭く、ホコリ臭かったのですが、それがかえって冒険心を刺激して意味もなくワクワクしました。
それから数年後、図書館は独立して別の場所に建てられ、子供用の本専用のフロアも設けられて室内も明るく、使いやすくなりました。
何よりも画期的な変化が、図書カードのバーコード化でした。
本に付属している図書カードに自分の名前を手書きで記入して窓口に提出するという借り方をしていたのが一変したのです。
バーコードのつけられた自分の名前入りの図書カードをもらった時は、うれしいのと、「変」なものに出会った少々の警戒心とがいりまじり、なかなか複雑な気分でした。
この新しい図書カードを使ってみたい思いも手伝って、それから図書館には頻繁に通うようになりました。
学校の夏休み中のある日、いつものように図書館の中をうろついていて、気付きました。
線香の匂いがする・・・。
原因はすぐに思いつきます。実は図書館の隣はお寺の墓地になっているので、お盆のシーズンにはたくさんのお墓の前でそれぞれの線香がもうもうとたかれるのです。その匂いが開いた窓から入ってきていたのでした。
線香の匂いは好きだったので、これは夏の良い思い出のひとつとして記憶に残っています。
ところでこの思い出。ここ数年では違う意味をもってきつつあります。
そういえば、あの頃は窓が開いていたんだなあということです。おそらく当時の夏の暑さは窓を開けることである程度はしのげていたのです。
それにひきかえ昨今の夏の暑さは一体どうしてしまったのでしょう。
今、窓を開けるだけで夏の暑さをのりきろうとするのは自殺行為にあたります。
図書館も窓を閉め切って、エアコンをつけるようになりました。
昔はガラガラだったロビーのいすに、エアコン目当てのおじさん達が新聞片手にずらりと
並んで座るようになった光景も見慣れたものになりました。
なかには新聞すら持たずに、いすに完全に体をもたせかけて爆睡している人もいます。口が開いてます。実に気持ちよさそうです。・・・いいのかこれで?
めったに行かなくなった図書館ですが、たまに行くことがある度に、こんな光景を見かける度に、ふと線香の匂いを思い出すのです。
経理部 倉田