人は、線を引く。
紙の上に線を引けば、そこに形が生まれる。
街に線を引けば、道路や敷地が生まれる。
そして地図に線を引けば、国境が生まれる。
東京・代々木の森の中に立つ国立代々木競技場は、そんな「線」の意味を考えさせる建築だ。
まず目を奪われるのは、巨大な屋根の曲線である。
地面から伸びる二本の大きな柱。そこから張られたケーブルが屋根を支え、左右へ大きく広がりながら、中央に向かって緩やかに沈み込む。屋根は、ただ載っているのではない。まるで巨大な布が張り渡され、その重さと力によって静かにたわんでいるように見える。
近づいて見ると、そのスケールに圧倒される。
遠くからは一枚の流麗な曲面に見えていたものが、近づくにつれて、鉄、コンクリート、ケーブル、屋根材といった無数の要素の集合であることが分かってくる。
けれど、それらは決してバラバラには見えない。
すべてが一本の大きな曲線へと収束している。
直線的な近代建築が「切る」ことで空間をつくるのだとすれば、代々木競技場は「張る」ことで空間をつくっている。
柱から柱へ。
地面から空へ。
力から形へ。
その間に引かれた線が、巨大な内部空間を生み出している。
しかも、その建築は周囲の代々木の森と対峙しながら、完全には切り離されていない。
人工的な構造物でありながら、屋根の曲線にはどこか生き物のような柔らかさがある。
構造の必然から生まれた線が、結果として詩的な曲線になっている。
一方、世界には、人間が引いた別の線がある。
国境だ。
地図の上に引かれた一本の線によって、「こちら側」と「あちら側」が決められる。
ときには、山や川、民族や文化、そこで暮らす人々の生活圏を越えて、政治的な都合によって直線的な境界が引かれることもある。
地図の上では、ほんの細い線にすぎない。
しかし現実の世界では、その線が人を分け、土地を分け、歴史を分ける。そして、そこに緊張や対立が生まれ、ときには紛争へとつながっている。
代々木競技場の曲線と、地図上の国境。
どちらも人間がつくった「線」だ。
けれど、一方は人を包み込むために引かれ、もう一方は人を隔てるために引かれる。
線には、分ける力がある。
そして、つなぐ力もある。
美しい線とは、単に形の美しい線ではないのかもしれない。
その線が何を囲み、何を開き、何をつなぐのか。
誰のために引かれ、誰をその外側に置くのか。
一本の線が、境界になるのか、ならないのか。
その違いを決めるのは、線そのものではない。
その線を、誰が、何のために引いたのか。
代々木の空に浮かぶ大きな曲線は、静かにその問いを投げかけているような気がする。
美しさとは、飾ることではなく、整えること。

Dragée の新型Orderly。
フロントに真っ直ぐな線で上部と下部のカラーをわけることは「強さ」と「弱さ」を調和することをコンセプトにしました。
輪郭を整え、表情をやわらかくし、自信という静かな輝きを映し出す。
流行に左右されるデザインではなく、時間を重ねるほどに愛される美しさ。
そのすべてが、美しさのためではなく、その人らしさのためにある。
「Orderly」という名前には、秩序、調和、そして整うという想いを込めました。
ブランド:Dragée(ドラジェ)
品番:ORDERLY
参考小売価格:50,160円(税込)
日本製

